午前4時。
辺りは暗いが外へ出てみる。

天頂は星空。ひとつひとつの星がとても大きい。
北岳山頂の方にはオリオン座が見える。

眼下には雲海が。
その向こうには富士山が浮かぶ。
  
  
4時40分出発。気温は氷点下。
前日からの強風が容赦なく吹きつける。
ヘッドランプの明かりを頼りに、急斜面を登り始める。

少しでも気を抜くと死ぬかもしれない。
斜面は何百メートルも下に向かって落ちている。
暗闇の中で、ものすごい緊張感と恐怖に襲われる。

空気が薄い上に強風で、呼吸が思うようにできない。
鼻をすすればなおさら。
緊張もあり、だんだん気分が悪くなってくる。

俺なんかが来てもいい場所ではない。何で来てしまったんだろう。
そう思いながら、必死で岩にしがみつく。

5時15分
山頂手前のピークに登るころには、辺りはすっかり明るくなっていた。
右上に見えるのが北岳山頂。その向こうには富士山の姿が。

山頂まで行くと、朝焼けが消えてしまうかもしれない。
また、ここから先は難しい道ではないにも関わらず、
そこまで行く気力も失せていた。

ここで撮影を開始することにする。
  
  
鳳凰三山越しの空と雲海

明けゆく空

 
北岳山頂の奥には、静岡市最北端かつ最高峰の間ノ岳。
標高3189メートルは国内4位。

そして富士山

生まれてから富士山を見て育った少年時代。
写真を始めてからは、雲海に浮かぶ富士山に憧れ続けた。
そういえば、初めて撮ったのも富士山だった。

多少は写真も上手くなり、天気も少しは読めるようになった。
登山技術は全く無いけど、ある意味、これまでの集大成かもしれない。
来れて本当によかった。
  
  
太陽は雲に隠れてしまい、日の出は見えなかった。
体力と気力も回復したので、改めて山頂へ向かう。

SDIM8425.jpg

山頂に着くと、それまで吹き荒れていた風が止んだ。
前日 稜線に出てから、初めてこの山の優しさに触れた気がした。

そして、、、

雲海が本当の海のように見える。

ここまで観られれば満足です。お腹いっぱいです。
そんなわけで下山することに。
  
  
明るい道は 高度感はあるものの、慎重に降りれば問題ない。
しかし、前日からの膝の痛みはどうしようもない。
下りって、上りよりも体に負担がかかるんです。

1900メートル付近で、ついに限界を迎えた。
ここまで1時間に600メートルのペースで降りてきたんだけど、
ここから先で1時間半かかってしまった。

おかげでバスに遅れ、次の便まで2時間待つことに。
まあ、無事に下山できたことを喜ぶべきか。

いろいろと考えさせられる山行でした。